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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「高齢者の方とじっくり関わりたい」「落ち着いた環境で多職種と連携して働きたい」。そんな思いから、老健(介護老人保健施設)への転職を考える薬剤師が増えています。老健は、介護施設のなかでも薬剤師の配置が制度上想定され、施設のなかで薬を管理する数少ない職場です。
この記事では、老健とはどんな施設か、薬剤師の役割、調剤薬局との違い、働き方やメリット・デメリット、年収の傾向、向いている人と求人の探し方までを、現役薬剤師の目線で整理します。介護施設全般の転職方法は別の記事でまとめているので、あわせて読んでみてください。
- 老健とはどんな施設か(病院と在宅の中間)
- 老健薬剤師の役割と調剤薬局との違い
- 働き方・メリット・デメリットと年収傾向
- 向いている人と、少ない求人の探し方
老健(介護老人保健施設)とは
老健は、病気やけがで入院した高齢者が、退院して自宅へ戻るためのリハビリと医療管理を受ける施設です。要介護の認定を受けた方が、3か月から半年ほどを目安に入所し、在宅復帰を目指します。医師が常駐し、看護師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリの専門職が手厚く配置されているのが特徴で、「病院と在宅を結ぶ中間施設」と呼ばれます。
同じ高齢者施設でも、特別養護老人ホームが終のすみかとして長く暮らす場であるのに対し、老健は在宅復帰を前提としてリハビリに力を入れる点が大きく違います。この「医療と介護の中間」という性格が、老健で働く薬剤師の役割にも表れています。
老健は「家に帰ること」をゴールにした施設です。だからこそ、入所中に薬を整理して、自宅でも続けやすい形にしていく薬剤師の関わりが大切になります。医療と介護のあいだに立つ、やりがいのある場所ですよ。
老健に薬剤師の配置が求められる理由
老健では、薬剤師の配置が制度のうえで想定されています。人員基準を定めた省令では、薬剤師は「施設の実情に応じた適当数」とされ、その解釈を示した通知で「入所者の数を300で割った数以上」が標準とされています。医師が常駐して施設のなかで薬が処方されるため、その調剤や薬の管理を担う薬剤師が必要だからです。特別養護老人ホームや有料老人ホームには薬剤師の配置義務がなく、外部の調剤薬局が訪問して薬を管理するのとは、ここが大きく異なります。
ただし、この配置は努力義務的な性格が強く、実際の運用にはばらつきがあります。老健の入所者は平均で90人前後の施設が多く、「300人に1人」という標準では、ひとつの施設あたり0.3人ほどにしかなりません。全国に老健は約4,300施設ありますが、常勤で薬剤師を置いている施設は限られ、近隣の調剤薬局に薬の管理を委託しているところも少なくありません。そのため常勤よりもパートの求人が目立ち、老健は「施設内に薬剤師がいる数少ない介護施設」である一方で、求人の数自体は限られるのが実情です。
老健薬剤師の仕事内容
老健で薬剤師が担う仕事は、入所者の薬を安全に管理し、在宅復帰を薬の面から支えることが中心です。具体的には、次のような業務があります。
- 入所時に持参薬を確認(かかりつけ医の処方内容・服薬状況の把握)
- 多くの薬を飲んでいる方の、飲み合わせや重複・過量のチェックと見直しへの協力
- 定期薬・臨時薬の準備、施設内の調剤、薬の発注・在庫管理
- 医師・看護師・介護職・リハビリ職との情報共有と多職種連携
- 在宅復帰に向けた話し合いへの参加(自宅でも続けやすい薬への調整)
高齢の入所者は、複数の病気を抱えて多くの薬を飲んでいることが少なくありません。そうした薬を整理し、副作用のリスクを減らしながら、自宅でも管理しやすい形に近づけていくのが、老健の薬剤師ならではの大切な役割です。近年は、入所を機に多くの薬を見直して減薬につなげる取り組みが、かかりつけ医と連携した薬剤調整として介護報酬のうえでも評価されるようになっており、老健の薬剤師に期待される役割はさらに広がっています。
調剤薬局との違い
老健の薬剤師の働き方は、調剤薬局とは大きく違います。調剤薬局では、窓口に次々と来る患者さんの処方箋を限られた時間でさばいていきますが、老健では同じ入所者を継続的に見守りながら、一人ひとりの薬とじっくり向き合えます。処方箋の枚数に追われるプレッシャーが少なく、落ち着いて仕事ができる環境です。
また、調剤薬局では他の医療職と関わる機会が限られますが、老健では医師・看護師・リハビリ職・介護職とチームを組んで入所者を支えます。多職種で連携している実感を得やすく、高齢者の薬物療法やチーム医療の経験を積めるのが、老健で働く大きな魅力です。
働き方とメリット・デメリット
老健の入所者は症状が安定している方が中心のため、業務が突発的に増えにくく、残業が発生しにくいのが特徴です。日勤中心で、夜勤やオンコールのない求人も多く、生活との両立を重視する人に向いています。良い面と注意したい面を整理しました。他の転職先とも見比べたいときは、上のリンク先で転職先ごとの特徴を横断的に確認できます。
- 残業が少なく、日勤中心で生活リズムを整えやすい
- 多職種連携やチーム医療の経験を積める
- 高齢者の薬物療法や、多くの薬の見直しに専門性を発揮できる
- 同じ入所者と継続的に関わり、在宅復帰を支えるやりがいがある
- 求人の数が少なく、常勤よりパートの募集が多い
- 一人薬剤師になりやすく、相談相手が少ない場合がある
- 処方箋の応需枚数は少なく、調剤のスピード感は身につきにくい
年収の傾向
老健薬剤師の年収は、公開された確かなデータが少なく、はっきりした相場を示しにくいのが実情です。傾向としては、調剤薬局と同程度を目安に、施設の規模や母体の法人によって幅が出るイメージです。残業が少ないぶん、残業代を含めた手取りは控えめになることもあります。
一方で、母体に病院を持つ法人の老健などでは、待遇が比較的整っているところもあります。年収だけでなく、働き方の落ち着きや多職種連携の経験といった面も含めて、総合的に見るのがおすすめです。施設ごとのくわしい年収比較は、年収をテーマにした記事もあわせて参考にしてください。
向いている人と求人の探し方
老健への転職は、次のような人に向いています。
- 高齢者と継続的に、じっくり関わりたい人
- 多職種と連携して、チームで支える働き方をしたい人
- 多くの薬の見直しなど、高齢者の薬物療法に関心がある人
- 残業の少ない、落ち着いた環境で働きたい人
老健の薬剤師求人は数が少なく、表に出ている公開求人だけを探していると、なかなか見つかりません。薬剤師に特化した転職エージェントに「老健で働きたい」と希望を伝え、非公開求人を含めて探してもらうのが現実的です。求人が少ない分野こそ、複数のエージェントに登録して紹介の母数を増やしておきましょう。
老健の常勤求人は「待っていても出てこない」ことが多いです。希望を具体的に伝えて、出てきたら逃さない準備をしておくのが大事。パートから始めて施設の雰囲気を確かめる、という入り方も一つの手ですよ。
よくある質問
まとめ
老健への転職について、ポイントを整理します。
- 老健は在宅復帰を目指す「病院と在宅の中間施設」で、薬剤師の配置が想定されている
- 配置は「入所者300人に1人が標準」だが努力義務的で、常駐しない施設も多い
- 仕事は持参薬の確認・多くの薬の見直し・多職種連携・在宅復帰支援が中心
- 残業が少なく落ち着いて働ける一方、求人は少なくパートが多い
- 年収は調剤薬局と同程度が目安。少ない求人はエージェント活用で探す
老健は、高齢者の薬物療法とチーム医療にじっくり向き合える、やりがいのある職場です。求人が少ない分野だからこそ、早めに情報を集めて準備しておきましょう。
※本記事の情報は2026年7月時点のものです。配置基準・求人の状況・年収・働き方などは、施設や時期によって異なります。薬剤師の配置基準(入所者300人に1人が標準)は介護老人保健施設の人員基準に関する省令・通知に基づくもので、施設数などの数値は厚生労働省の資料等を参考にしています。

