クリニックと調剤薬局の違い|年収・求人・働き方を薬剤師が比較

クリニックと調剤薬局の違い|年収・求人・働き方を薬剤師が比較

この記事を書いた人

くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。

「落ち着いて働けるクリニックの院内薬剤師がいいのか、それとも調剤薬局がいいのか」。同じ薬を扱う仕事でも、クリニック(院内処方)と調剤薬局では、働き方も年収も求人の数も大きく違います。この記事では、両者を正面から比較します。

とくに掘り下げたいのが、「なぜクリニックの薬剤師求人はこんなに少ないのか」という点です。単に医薬分業が進んだからではありません。診療所に薬剤師の配置義務がないことと、診療報酬の構造という二つの理由があります。ここを知っていると、求人の探し方も待遇の見方も変わります。

院内処方と院外処方の違い、仕事内容、年収、働き方、求人の数、向いている人を整理します。それぞれの職場の詳しい内容は個別の記事でまとめているので、あわせて参考にしてください。

この記事でわかること
  • クリニック(院内処方)と調剤薬局の違いと、医薬分業の最新状況
  • クリニックの薬剤師求人が少ない二つの構造的な理由
  • 仕事内容・年収・働き方・求人の数の比較
  • それぞれの特徴とメリット・デメリット
  • どちらが向いているかと、面接で確認したいこと
目次

クリニックと調剤薬局の違いとは

まず押さえたいのが、薬を渡す仕組みの違いです。クリニックの院内処方は、診察を受けた診療所の中で薬を用意し、その場で患者さんに渡す方法です。一方、調剤薬局は、診療所が発行した処方箋をもとに、院外の薬局で薬を渡します。これを院外処方と呼びます。

日本では1974年を医薬分業の出発点として院外処方が広がり、いまや主流です。最新の状況を数字で見てみましょう。

項目(令和7年度)
数値
医薬分業率(処方箋受取率)
82.2パーセント(前年度82.1パーセント)
処方箋枚数
8億5,730万枚(前年比99.2パーセント)
調剤件数
7億2,817万件(前年比100.0パーセント)
調剤点数
8億3,116万点(前年比103.5パーセント)

※出典:日本薬剤師会「保険調剤の動向(令和7年度調剤分・全保険・速報値)」。分業率は推計値です。

院外処方が約8割、院内処方は約2割という水準です。かつては大半が院内処方でしたが、この50年で立場が大きく逆転しました。

数字が語る、二つの転換点

① 分業率の伸びは止まりました。2023年度は前年度比プラス3.9ポイントと大きく伸びましたが、令和7年度は82.1パーセントから82.2パーセントへ、わずかプラス0.1ポイント。「これから院内処方がさらに減っていく」という前提は、もう成り立ちません。院内処方は約2割の水準で下げ止まりつつあります。

② 処方箋の枚数は減り、点数は増えました。枚数が前年比99.2パーセントと減る一方、調剤点数は103.5パーセント。数をさばく時代から、1枚あたりの中身で価値を出す時代へ移りつつあるということです。調剤薬局を選ぶなら、この流れは意識しておいて損はありません。

💬 くらげのひとこと

ざっくり言うと、クリニックは「落ち着きと引き換えに、年収と求人が少なめ」。調剤薬局は「忙しさは門前しだいだが、年収もキャリアの選択肢も広い」。どちらを優先するかで選ぶのがよいですよ。

クリニックの求人は、出会えるかどうかが勝負です

院内処方の薬剤師求人は数が限られ、公開される前に決まることも珍しくありません。希望を先に伝えておける相手を持っておくと、機会を逃しにくくなります。

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なぜクリニックの薬剤師求人は少ないのか

「医薬分業が進んだから」というのは半分しか答えていません。院内処方が約2割残っているのに、そこで働く薬剤師の求人はそれ以上に希少です。理由は二つあります。

① 診療所には薬剤師を置く義務がない

病院には医療法で薬剤師の人員配置標準が定められていますが、一般の診療所にはそうした配置の定めがありません。加えて、薬剤師法第19条では、薬剤師でない者が販売または授与の目的で調剤することを禁じつつ、医師が一定の場合に自己の処方箋により自ら調剤することを例外として認めています。

つまり、院内処方を行う診療所であっても、薬剤師を雇わずに運営することが制度上は可能だということです。実際、院内処方の診療所の多くは薬剤師を置いていません。「院内処方のクリニック=薬剤師の職場」ではないのです。

② 薬剤師を置いても、診療報酬がほとんど増えない

こちらのほうが本質的です。医科の診療報酬には、薬剤師が常時勤務する保険医療機関で院内投薬を行った場合に算定できる調剤技術基本料があります。その点数を、薬局側と並べてみます。

項目
点数
算定の単位
調剤技術基本料(外来の患者に投薬した場合)
14点
患者1人につき月1回
調剤技術基本料(入院中の患者に投薬した場合)
42点
患者1人につき月1回
院内製剤加算
10点
院内製剤を用いて調剤した場合に加算

※出典:厚生労働省 診療報酬点数表 調剤技術基本料。薬剤師が常時勤務する保険医療機関において投薬を行った場合(処方箋を交付した場合を除く)に算定します。要件は簡略化して記載しているため、詳細は告示・通知をご確認ください。

外来の患者さんに院内で薬を渡しても、薬剤師がいることで増える収入は月に14点、つまり140円です。一方、同じ患者さんが処方箋を持って薬局へ行けば、薬局側は受付のたびに調剤基本料や服薬管理指導料などを算定します。

ここから見えること

クリニックが薬剤師を雇っても、その人件費を診療報酬で回収する仕組みが用意されていません。求人が少ないのは景気や人気の問題ではなく、制度の設計そのものが理由です。だからこそ、院内薬剤師を置いているクリニックは、収益ではなく「院内で薬まで完結させたい」という方針で置いていることが多い。応募するときは、その方針が何なのかを聞いておくと、職場の安定性が読めます。

比較表:クリニックと調剤薬局

クリニック(院内処方)と調剤薬局の主な違いを、一覧で整理しました。

項目
クリニック(院内処方)
調剤薬局
処方の形態
院内処方(診療所内で渡す)
院外処方(処方箋を受けて渡す)
扱う処方
その診療所の処方のみ
複数の医療機関の処方箋
薬剤師の位置づけ
配置義務がなく、置くかどうかは院の方針しだい
処方箋40枚につき1人以上の配置が必要
年収の傾向
病院に近い水準でやや控えめな傾向
クリニックより高めの傾向
働き方
落ち着きやすい・1人が多い。診療時間に連動
門前の診療科で忙しさが変わる
求人の数
非常に少ない(制度上、置く必然性が弱い)
多い・転職しやすい
経験の幅
限られた診療科に偏りやすい
幅広い・在宅や昇進の道も
次の転職のしやすさ
職歴が特殊で、戻り先の選択肢は狭まりやすい
経験がそのまま通用する職場が多い

クリニック(院内処方)薬剤師の特徴

クリニックの院内薬剤師は、診療所の中で院内処方を担います。その診療所の処方だけを扱うため、業務は比較的落ち着いており、1人で任されることが多いのが特徴です。医師との距離が近く、疑問があればその場で確認できます。院内で完結するため、残業も少なめの傾向があります。

見落とされがちですが、診療時間に働き方が完全に連動するのもこの職場の性格です。休診日はそのまま休みになり、診療が延びれば残ります。カレンダーが読みやすい反面、自分の都合で調整する余地は少なくなります。

注意点は、やはり求人の少なさです。前章のとおり、制度上そもそも薬剤師を置く必然性が弱く、募集が出ること自体が稀です。扱う診療科が限られるため経験の幅が狭まりやすく、年収も突出はしにくい傾向があります。次に転職するとき、院内処方の職歴がそのまま評価される職場は限られる点も、長い目で見ると効いてきます。落ち着いた働き方を最優先したい人に向いた職場です。詳しくは院内処方クリニックをテーマにした記事も参考にしてください。

調剤薬局薬剤師の特徴

調剤薬局の薬剤師は、複数の医療機関が発行した処方箋をもとに、調剤・処方監査・服薬指導・薬歴管理を行います。さまざまな診療科の処方に触れられるため経験の幅が広く、保険に関する知識も身につきます。求人が多く、転職しやすいのも魅力です。

年収はクリニックより高めの傾向があり、在宅医療への対応や、管理薬剤師・エリアマネージャーへの昇進といったキャリアの広がりもあります。ただし、門前のクリニックの診療科によっては忙しくなることもあります。

先ほどの数字が示すとおり、処方箋の枚数そのものは増える局面を過ぎ、1枚あたりの中身が問われる方向へ動いています。在宅や服薬フォロー、多職種との連携といった対人業務に前向きな薬局を選んでおくと、この先の変化に乗りやすくなります。年収や働き方の幅を求める人に向いた職場です。調剤薬局の全体像は、調剤薬局の薬剤師について整理した記事もあわせてご覧ください。

💬 くらげのひとこと

調剤薬局は「幅が広い」ぶん、同じ調剤薬局でも門前の診療科で働き方がまるで違います。眼科や皮膚科の門前は比較的落ち着きやすく、総合病院や内科の門前は忙しくなりがち。求人票の社名や立地だけで決めず、門前がどこかまで必ず確認してくださいね。

どちらが向いているか

それぞれに向いている人を整理しました。自分が何を優先したいかで考えてみてください。

クリニックが向く人
調剤薬局が向く人
落ち着いた環境を最優先したい
年収やキャリアの幅を求めたい
残業を抑えたい・規則的に働きたい
幅広い処方を経験したい
医師と近い距離で働きたい
求人の選択肢を多く持ちたい
当面は職場を変えるつもりがない
在宅や対人業務に関わっていきたい

面接・見学で確認したいこと

対象
聞くこと
わかること
クリニック
「院内処方を続けている理由を教えてください」
院の方針が明確か。院外処方に切り替わる可能性の高さが読める
クリニック
「薬剤師は何人体制で、休診日以外に休めますか」
1人体制だと診療日は基本的に休めない。代替の有無がわかる
調剤薬局
「門前はどの医療機関で、集中率はどのくらいですか」
忙しさと処方の幅。診療科が偏っていないかがわかる
調剤薬局
「在宅は月に何件で、担当はどう分けていますか」
対人業務にどれだけ踏み出しているか。今後の伸びしろが読める

とくにクリニックの一つ目は重要です。院内処方を続ける明確な理由がないなら、数年後に院外処方へ切り替わり、その職場自体がなくなる可能性があります。院長の考えを直接聞いておいてください。

なお、クリニックの院内処方の求人は数が限られるため、見つけにくいのが現実です。どちらの職場も、求人の実態や働き方は職場によって差があるので、薬剤師に強い転職エージェントに確認してもらうと安心です。クリニックと調剤薬局以外の転職先も含めて広く見比べたいときは、次の記事で職場ごとの特徴を横断的に確認できます。

よくある質問

クリニックと調剤薬局、どちらが年収は高いですか▼

一般的には調剤薬局のほうが高めの傾向があります。クリニックの院内薬剤師は病院薬剤師に近い水準になりやすく、調剤薬局よりやや控えめです。背景には、薬剤師を置いてもクリニック側の診療報酬が大きくは増えないという構造もあります。ただし職場や地域で差が大きいため、具体的な水準は年収をテーマにした記事もあわせて参考にしてください。

クリニックの院内薬剤師の求人は多いですか▼

非常に少ないのが現実です。理由は二つあり、一般の診療所には薬剤師の配置義務がないこと、そして薬剤師が常時勤務していても算定できる調剤技術基本料は外来で月1回14点にとどまり、人件費を診療報酬で回収する仕組みがないことです。落ち着いた働き方を求める人には人気があるぶん、見つけたら早めに動くことをおすすめします。

院内処方のクリニックには必ず薬剤師がいるのですか▼

いるとは限りません。病院には医療法で薬剤師の人員配置標準が定められていますが、一般の診療所にはそうした定めがありません。また薬剤師法第19条は、医師が一定の場合に自己の処方箋により自ら調剤することを例外として認めています。そのため、院内処方の診療所でも薬剤師を置いていないところは多くあります。「院内処方のクリニック=薬剤師の職場」ではない点に注意してください。

医薬分業はこれからも進むのですか▼

伸びは止まりつつあります。日本薬剤師会の推計では、令和7年度の医薬分業率は82.2パーセントで、前年度の82.1パーセントからプラス0.1ポイントにとどまりました。2023年度にプラス3.9ポイントと大きく伸びた反動もありますが、院内処方は約2割の水準で下げ止まりつつあると見るのが自然です。「院内処方はいずれなくなる」という前提で職場を避ける必要は、以前ほどありません。

仕事内容に大きな違いはありますか▼

調剤や服薬指導という基本は似ています。ただ、クリニックはその診療所の処方のみを扱い、調剤薬局は複数の医療機関の処方箋を扱います。調剤薬局は処方監査や保険知識、在宅対応など、業務の幅が広くなる傾向があります。クリニックは医師にその場で確認できる一方、薬剤師の立場から独立して監査するという役割は薄くなります。

経験を積むならどちらがよいですか▼

幅広い経験を積みたいなら、複数の診療科の処方に触れられる調剤薬局のほうが向いています。クリニックは扱う診療科が限られるため経験が偏りやすく、次に転職するときに職歴がそのまま評価される職場も限られます。落ち着いた環境を重視するならクリニックも選択肢ですが、キャリアの順序としては、先に調剤薬局で幅を作ってからクリニックへ移るほうが選択肢を狭めずに済みます。

クリニックが院外処方に切り替えたらどうなりますか▼

院内処方をやめると、薬剤師の業務そのものがなくなります。分業率の伸びは鈍化しているとはいえ、個々のクリニックが方針を変える可能性はゼロではありません。応募時に「院内処方を続けている理由」を聞いておくと、方針の強さが読めます。明確な考えがある院なら安定していますし、なんとなく続けているだけなら、切り替わるリスクを見込んでおいたほうがよいでしょう。

調剤薬局はこれから厳しくなりますか▼

処方箋の枚数が増える局面は過ぎつつあります。令和7年度は処方箋枚数が前年比99.2パーセントと減る一方、調剤点数は103.5パーセントと増えました。数をさばくのではなく、1枚あたりの中身で価値を出す方向へ動いているということです。在宅や服薬フォロー、多職種連携に取り組んでいる薬局を選んでおくと、この変化に乗りやすくなります。

まとめ

クリニック(院内処方)と調剤薬局の比較について、ポイントを整理します。

  • クリニックは院内処方、調剤薬局は院外処方で薬を渡す
  • 令和7年度の医薬分業率は82.2パーセント。前年度から0.1ポイント増にとどまり、伸びは止まりつつある
  • 処方箋枚数は前年比99.2パーセントと減り、調剤点数は103.5パーセントと増加。数から中身へという転換が起きている
  • クリニックの求人が少ないのは、診療所に薬剤師の配置義務がないことと、調剤技術基本料が外来で月1回14点にとどまることが理由
  • クリニックは落ち着きやすいが、年収・求人・経験の幅・次の転職のしやすさは控えめ
  • 調剤薬局は年収高めの傾向で、求人が多く経験の幅も広い
  • クリニックに応募するなら「院内処方を続けている理由」を必ず確認する

どちらが優れているということではなく、自分が何を優先したいかで選ぶものです。落ち着きか、年収やキャリアの幅か。優先順位を整理して、納得のいく職場を選んでいきましょう。ほかの職場も含めて比べ直したい方は、薬剤師の転職先一覧もあわせてご覧ください。

本記事で参照した主な出典

  • 日本薬剤師会「保険調剤の動向(令和7年度調剤分・全保険・速報値)」(医薬分業率・処方箋枚数・調剤点数)
  • 厚生労働省 診療報酬点数表 調剤技術基本料
  • 薬剤師法 第19条(調剤の業務独占と医師による調剤の例外)
  • 薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令 第1条第1項(処方箋40枚につき薬剤師1人)

※本記事の情報は2026年9月時点のものです。医薬分業率は日本薬剤師会が公表した令和7年度の推計値です。法令の条文および診療報酬の算定要件は要旨を簡略化して記載しているため、詳細は原文および厚生労働省の告示・通知をご確認ください。年収・働き方・求人の状況は、職場や地域・時期によって異なり、年収は目安として記載しています。

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