この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「子どもがいても転職できるのか」「育休明けに動くのは非常識ではないか」「ブランクがあっても戻れるのか」。独身のときとは、悩みの中身がまるで違ってきます。
先に結論をお伝えします。薬剤師は届出上、女性が62.0パーセントを占める職種です。ライフイベントへの対応が制度として整っている職場は多く、どのライフステージでも転職の選択肢はあります。決め手になるのは、時期に応じた職場選びと雇用形態の使い分けです。
そして2025年、育児に関する制度が大きく変わりました。子の看護等休暇からは「入社6か月未満は対象外」の規定が消え、残業免除の対象も小学校就学前まで広がっています。数年前の情報のままだと判断を誤るため、その内容もあわせて整理します。
この記事でわかること
- 届出データで見る女性薬剤師の現状と、育休取得率の最新値
- 独身・妊娠中・育休明け・ブランク復職、それぞれの戦略
- 2025年に変わった制度と、転職者にとっての意味
- 職場種別と雇用形態の選び方
- 薬剤師の時給で見る扶養の壁と、面接での答え方
女性薬剤師の現状|データで見る立ち位置
厚生労働省の令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、届出薬剤師329,045人のうち女性は203,979人で62.0パーセントを占めます。職場によっては8割以上が女性というところも珍しくありません。
制度の利用も進んでいます。厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査では、全産業の育児休業取得率は女性88.3パーセント、男性50.9パーセントで、男性は調査開始以来はじめて5割を超えました。
ただし、数字がよくても職場ごとの差は大きく残ります。薬局には処方箋の枚数に応じた薬剤師の配置基準があり、1人抜けると単に忙しくなるだけでなく、体制そのものが維持できない店舗があります。制度の有無より、抜けた分を誰がどう埋めるかが決まっているかを見てください。
「年収より時間」を優先する方がとても多いです。でも時間を確保しながら年収を守る方法はあります。それが職場選びと雇用形態の組み合わせです。この記事で順番に見ていきます。
ライフステージ別の戦略
妊娠中は「動かない」が原則。ただし理由がある
妊娠中の転職をおすすめしにくい理由は、育児休業給付の要件にあります。休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(ない場合は就業時間80時間以上の月)が12か月以上あることが求められるためです。条件を満たせば前職の加入期間と通算できる場合もありますが、個別事情によるためハローワークでの確認が必要です。
加えて、育児休業は労使協定で「入社1年未満」を対象から外せます。一方、産前産後休業と出産手当金には勤続年数の条件がありません。この差を知らずに動くと、産休は取れたのに育休は対象外だったという事態が起こります。
育休明けの転職は違法ではない
育児休業給付を受け取ったあとに転職すること自体に問題はありません。受け取った給付は、復帰した場合も退職した場合も原則として返還を求められません(当初から復帰の意思がなかったと判断される場合を除きます)。ただし復帰直後の退職は、次の選考での印象に影響します。復帰後しばらく在職してから動くほうが、説明がしやすくなります。
育休明けの転職でいちばん効くのは「同じ立場の人が職場に何人いるか」です。自分1人だと、呼び出しのたびに気を使います。複数いる職場を選ぶだけで、働きやすさが変わります。
2025年に変わった制度
育児に関する制度は2025年に大きく動きました。転職を考えるうえで関係が深い5点をまとめます。
出典:厚生労働省コラム「2025年4月から、改正育児・介護休業法等が施行」ほか。週の所定労働日数が2日以下の方は、看護等休暇について引き続き労使協定で除外できます。
転職者にとって効くのは1つ目です。以前は、転職して間もない時期に子どもが熱を出しても有給休暇を使うしかない職場がありました。いまは入社直後から看護等休暇を請求できます。育休には労使協定の1年要件が残っている一方、看護等休暇には入社期間の制限がなくなった。この差を知っておくと、転職時期の判断が変わります。
法律上の短時間勤務制度は子が3歳になるまでが対象です。そこから就学前までをどう埋めるかが、2025年10月の措置義務化で選べるようになりました。面接では「2025年10月から義務化された措置として何を用意していますか」と聞いてみてください。
実際に効いてくるのは、育休の1年より、その後の数年です。子どもが熱を出したときに休めるか、残業を断れるか。ここを面接で聞いておくと、入ってからの生活が読めます。
職場種別で見る働きやすさ
どの職場を選ぶにしても、確認すべき点は共通しています。配属予定店舗の薬剤師が何人か、当日欠勤したときに他店舗から応援が来るか。この2つは求人票に書かれないので、面接で必ず聞いてください。会社の規模ではなく、自分が働く店舗の人数が働きやすさを決めます。
子育て中でいちばんおすすめしやすいのは、大手チェーン調剤薬局の時短かパートです。制度が整っていて、応援も回せる。子どもが大きくなったら日数を増やす道も残ります。
雇用形態の選び方
よくある流れは、子どもが小さいうちはパートで時間を確保し、小学校入学のタイミングで日数を増やすという形です。ただし2025年10月から柔軟な働き方の措置が義務化されたため、正社員のまま就学前まで調整できる職場も増えています。パートに切り替える前に、正社員のままで使える措置がないかを確認してみてください。
「今は稼ぐより時間」という判断は、まったく間違っていません。ただ、正社員を手放す前に、時短や在宅など使える制度が残っていないか一度確認してください。戻すより、保つほうが楽です。
扶養の壁|薬剤師の時給で考える
パートで働くときに気になるのが扶養の範囲です。ただし年収の壁は制度改正が続いており、金額を覚えるより仕組みを押さえるほうが確実です。2026年9月時点の状況を整理します。
金額は改正が続いており、適用の時期や条件にも細かい定めがあります。最新の内容は国税庁および日本年金機構の案内でご確認ください。
薬剤師の場合、先に来るのは130万円の壁
薬剤師は時給が高いため、週20時間に届くよりずっと手前で130万円に達します。つまり扶養内で働きたい場合、実際に効いてくるのは130万円の壁です。時給別の目安を計算しました。
年間52週で単純計算した目安です。交通費の扱いや賞与の有無で実際の年収は変わるため、勤務先と確認してください。
この表からわかるのは、薬剤師が扶養内で働くなら、週2日から3日の短時間に収まるということです。それ以上働きたいなら、扶養を外れて自分で社会保険に入るほうが、長い目で見ると有利になることもあります。将来の年金にも反映されるためです。
面接では「扶養内で働きたい」とだけ伝えるのではなく、「週◯日、1日◯時間まで」と時間で伝えてください。金額の壁は制度改正で動きますが、シフトは時間で組まれます。時間で伝えるほうが、双方にとって確実です。
保育料まで含めて計算すると、扶養内に抑えるより働いたほうが手元に残るケースもあります。年収の壁は毎年のように変わるので、思い込みで決めず、そのときの数字で計算し直してください。
面接で聞かれることと、答え方
子育て中の方が聞かれやすい質問です。共通するコツは、できない理由ではなく、どう対処するかを具体的に言うことです。
発熱で呼ばれたときを聞かれた場合の一例
「まず夫に連絡し、対応できるか確認します。難しい場合は近くに住む母に頼める体制を整えています。それでも難しいときは早退させていただくことがありますが、引き継ぎは当日中に済ませます。病児保育にも登録済みです。」
残業や土曜出勤を聞かれた場合の一例
「保育園の迎えがあるため、平日は18時までの勤務を希望します。繁忙期に30分程度残ることは対応できます。土曜出勤は月1回から2回であれば可能です。」
3つ目の質問については、本来は採否の判断に用いてはならない事項です。それでも聞かれることがあるため、答え方を用意しておくと動揺せずに済みます。具体的な予定を答える必要はありません。「制度を活用しながら長く働きたい」という方向に言い換えて返せば十分です。
聞かれたら何と答えるかを、家族と先にすり合わせておいてください。「そのときは義母に頼めます」と言うなら、本当に頼めるかを確認しておく。面接で言ったことは、入職後に守る前提になります。
よくある質問
まとめ
女性薬剤師・ママ薬剤師の転職について、要点を整理します。
- 薬剤師は女性が62.0パーセント。育児休業取得率は女性88.3パーセント、男性50.9パーセント
- 2025年4月から子の看護等休暇の「入社6か月未満は対象外」が廃止。転職直後でも休める
- 制度より実態。配属店舗の薬剤師の人数と、当日欠勤の応援体制を必ず聞く
- 扶養内で働くなら週2日から3日が目安。金額ではなく時間で希望を伝える
子育てと薬剤師の仕事は両立できます。大切なのは、いまのライフステージに合う職場を選ぶこと。まずは働ける曜日と時間を数字で決めるところから始めてみてください。そこが決まれば、求人の見え方が変わります。
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」(男女構成・従事先の内訳)
- 厚生労働省「2025年4月から、改正育児・介護休業法等が施行」
- 厚生労働省「育児休業を取得される方へ 出生後休業支援給付」案内資料
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(育児休業取得率)、国税庁・日本年金機構の年収の壁に関する案内、薬剤師法第9条
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

